CASE STUDY - 事例

世田谷区様

大規模自治体で初、世田谷区がAI顔認証を勤怠管理に採用
人事課担当者に聞く自治体DXの実情

従業員の勤怠管理AIZE Biz

     

    「職員目線で初歩的なつまずきを一つひとつ潰す」

     

    ■ユーザビリティを高めるところに注力

     

    ――今回、AIZEの顔認証打刻を採用されたわけですが、機能的にはどういった部分を重視されたのでしょうか。

    鈴木氏 ストレスなく使うことができるというのが大前提としてありました。5,000人以上の職員が利用するわけなので、ユーザーインターフェースのデザイン性や操作性を中心に、ユーザビリティを高めるというところを重視しました。

     

    ――管理画面ではどんな機能を重視されましたか。

    中村氏 所属によっては50名以上の非常勤職員を抱えるところもありますので、管理画面については視覚的に分かりやすいものであるとか、休暇の取得状況を一括で更新できる機能を備えるとかですね。運用開始後もアップデートを重ねて、使う側の利便性の向上を図れるようなところは重視してきました。

     

    AIZEの管理画面(勤怠情報一括編集画面)

     

     

    ――顔認証の精度そのものに対する不安はありませんでしたか。

    中村氏 運用前の7月の1カ月間にテストを実施したことで、精度についての不安はありませんでした。各所属に実際に打刻してもらう期間を設けていましたので、そこで問題があればこちらで吸い上げて対応してきました。

     

    ――打刻する際のインターフェイスについてはいかがですか。

    白石氏 本当にシンプルに、顔を認証して、出勤か退勤のボタンを押せばもう完了という形でしたので、職員もストレスなく使えていると思います。

     

    勤怠打刻用のシンプルな画面

     

     

    ■システム化へのハードルを一つひとつ潰していく

     

    ――4月に導入が発表されて、運用開始が8月でした。その間の準備期間で苦労されたのはどのあたりですか。

    白石氏 庁内ではペーパーレス化をどんどん促進している状況ではあるんですけれども、なかなかシステム化に慣れない実態もあるのかなと感じています。なかには、管理者としてシステムを触ることにアレルギーを持つ職員もいます。毎日行うものですから、職員がシステムに対して抵抗感を抱かずに、紙から移行するまでの準備が一番たいへんだったかなと思います。

     

    ――そこはどうやって乗り越えられたのですか。

    白石氏 7月のテスト期間のうちに、人事課で庁内にポータルサイトをつくり、そこでトリプルアイズさんにつくっていただいたマニュアルアップしながら、啓発をはかっていきました。導入に向けたガイドラインを載せたり、実際の操作を動画で撮影して手順をアップロードしたりと、工夫を凝らしながら支援ツールを準備して、ストレスなく移行できるように丁寧に行ってきました。

    白石さん

     

    ――運用開始日は決まっているわけですから、現場の方がきちんと理解してくれることに注力したわけですね。

    中村氏 そういう意味で、テスト期間があったのは本当に良かったなと思います。この1カ月で、職員がつまずく箇所もよくわかり、どうアプローチすればいいか、わかってきたので、なんとか稼働まで結びついたかなと思います。

     

    ――つまずくというのは、デジタルリテラシーの問題ですか。高齢者の方が多いとか、そういうことですか。

    中村氏 それも一つの要因ではありますが、自治体特有の問題もあります。デジタル化がこれまでなかなか進んでこなかったなかで、例えば管理者が職員の休日を出勤簿に反映させる際には、今まで紙に斜線を引けばよかったものを、システムにログインして、項目を選んで登録をするというのは、職員目線からすると急にレベルが上がるわけです。そもそも、どうやってログインすればいいかわからないといった初歩的なところから一つひとつ潰していくような感じでした。

     

     

    ■一括で勤務状況を参照できることで利便性が大幅にアップ

     

    ――8月から運用が始まって、3カ月が経過しました。使用感についてお聞かせいただけますか。

    中村氏 まず、人事課としての感想になりますが、これまで紙の出勤簿も確認をする機会が多々ありましたが、今回、システム化で全庁の職員の勤怠状況を見られるようになったのが、大きなメリットだと感じています。一括で参照できるようになりましたから、これまで、紙の出退勤簿を送ってもらったり、メールで送られてきた写しを確認したりといった、人事課と現場の間で何往復もしていたやり取りがなくなりました。自分たちからシステムを見に行けば、各職員の状況がわかるようになったので、給与支給事務などの利便性はかなり上がったと思います。

     

    鈴木氏 あとは、今回、アラート機能を充実していただいたこともポイントでした。出勤簿に間違いがあっても、これまでは紙でしたので、誰も気づかないことが多々あったのですが、それをアラートで拾えるようになりました。職員の勤怠管理の制度への理解が深まったんじゃないかと思います。各所属できちんと管理するんだという意識が醸成されているのであれば、人事課としてはとても嬉しいことです。

     

    ――所属の管理者からは、管理業務についてどういった声が届いていますか。

    中村氏 所属の担当者についても、これまで紙を探して確認していたことを画面で一括で管理できるようになったのでありがたいという声が届いています。職員の配属が多い所属部署では、50名から60名が配属されていますから、それだけの枚数の出勤簿がありますので、それを毎日チェックしたり記入したりというのは大変だったと思います。

     

    ――具体的にはどういう部署になりますか。

    中村氏 出張所の区民窓口には非常勤職員も多く配属されています。保育園もそうですね。保育園なんかは職員の入れ替わりも頻繁にあるので、管理が大変かと思います。基本的に紙の出勤簿が職場ごとにあるという状況ですので、確認が必要な際はいちいちいろんな職場に個別に連絡をすることが必要だったわけです。今回それがデータで、オールインワンになりました。こちらから自分でログインすれば、全職員の情報が出るようになりましたので、煩雑な連絡作業が一気になくなりました。元々、給与支給に際しては、間違いがあってはいけないので、実績入力と出勤簿を突合するという確認作業が必要なのですが、紙を取り寄せたりするといった現場と人事の間のラリーがなくなったことで、かなり効率化されたと感じています。

     

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